不死身の特攻兵

佐々木友次さんって知ってる?

私は、この本を読むまで知りませんでした。この人は陸軍の第一回の特攻隊のパイロットです。

“神風特別攻撃隊”、”零戦”、さすがに戦争を経験していない私たちでも知っている言葉。(ちなみに零戦は海軍の飛行機で、今回は陸軍の九九双軽の話。)でも、知ってるようで知らなかった”リアル”がここに記されていた。

神風特攻隊。私の知っている”神風特攻隊”は、それこそ「国のため」「天皇のため」にと、自らの命を賭けたヒーローかのような存在として感動的な話とセットになって紹介されていたり。子どもの頃に見聞きしたイメージが、今も引っ張られてる部分はある気がする。

本書によると、戦後に出版された書籍『神風特別攻撃隊』なんかは、特攻を”命令した側”の人が書いたもので、そりゃリアルは書かんわなって思った。そしてこの”命令した側”の人たち。どこまで本気で”体当たり作戦”をいい、と思っていたんやろう。どこまで本気で友次さんに”死んでこい”って言ってたんやろう。

この冒頭に出した佐々木友次さん。友次さんは、第一回目の特攻隊に選ばれました。理由は超優秀なパイロットだったから。軍としては、特攻作戦を成功させて、輝かしい戦果を上げないといけなかったから。

そして超優秀だったので、体当たりではなくて、急降下爆撃のあと不時着し、生き残ったのでした。(でもこれ読んでると体当たりもかなり難しい)しかも9回も。

9回も生きて帰って来たことも、もちろんすごいことだけど、何がすごいって、あの時代あの状況で上官に逆らい続けたことがすごい、と思った。

戦後、すべて隊員たちの”志願”だったとされた特攻は、ほんとは絶対に逆らえない”強制”で、そんな圧力がかかっている中、何度も生還した友次さん。最初の特攻で、戦艦を一隻撃沈した、という戦果を天皇にまで報告してしまったものだから、死んでいないと都合が悪いと、”必ず死んでこい”と言われ、何度も悪条件で出兵させられた友次さん。

私ならもうヤケになってしまいそうな気がするなー、、、全然想像しきれないけども。

読んでいて、何度も何度も軍のやり方に腹が立って仕方がなかった。

でも本書で語っている友次さん本人は、しょうがない。と落ち着いていた。

なんで9回も生還できたのか、どうしてそういう考え方ができるのか、この本を読むとなんとなく分かる。これは色んな人に読んでほしい。知ってほしい。今の私たちにできることは、実際は何が起こっていたのか真実を知ることと、同じことを繰り返したくないって思うことなのかな。

あともうひとつ。この”命令した側”の精神についての話。

本書に当時の首相東條英機の話が載っている。「勝つと思った方が勝つ」「負けたと思った時が負けで、負けだと思わなければ負けない」と言っている。

また、敵機の撃ち落とし方は「精神」で撃ち落とせと言っていた。なんじゃそれ。

そしてそれに続く、著者の鴻上尚史さんの記述がとても印象的だった。

「精神」を語るのは、リーダーとして一番安易な道です。職場の上司も、学校の先生も、スポーツのコーチも、演劇の演出家も、ダメな人ほど、「心構え」しか語りません。心構え、気迫、やる気は、もちろん大切ですが、それしか語れないということは、リーダーとして中身がないのです。

まさに。そして、それは今でも残っているように思う。「精神」だけじゃどうにもできないし、何も解決しないのに。何をすべきか、何が必要か、具体的に語れないと、具体的に指示できないと意味がない。

これはリーダーじゃないにせよ、自分のことにおいて考える時も必要なことで、「気持ち」だけではどうにもならんよなぁー。

鴻上さんも本書で語っているけど、年々気温が上昇している中、未だに真夏の炎天下での高校野球に苦言を呈してた。「慣習」ってほんま怖い。こういうのも本質を見失うと、そこで思考は停止してしまうよなって思う。

そんなことを色々考えた一冊でした。

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