『シャーロック・ホームズの冒険』

30歳を越えて、初めて「シャーロック・ホームズ」を読んだ。『シャーロック・ホームズの冒険』はホームズシリーズの5つの短編集の中で最初のものらしい.。

初心者ながら、元々シャーロック・ホームズについて少し知っている事はあった。

[ワタシがホームズについて知っていた3つくらいのこと]

  • アイリーン・アドラー、レストレード警部、モリアーティ教授などの登場人物がいる
  • ホームズが椅子に座って指先を合わせるポーズをする
  • 「君を確実に破滅させることができれば、公共の利益のために僕は喜んで死を受け入れよう」と誰かが言う

お気づきの方もいるだろうか。

これらは全て、映画『名探偵コナン ベイカーストリートの亡霊』から得た情報である。観たことありますかね?

私は小学6年生の時に映画館で観て、もう1回観たい!、と思ったのを覚えている。それから大人になって何回か見直した。大人になっても面白い。完全にゲームの中に入り込み、クリアできなければ全員死ぬというストーリー設定がもう良い。観ていない人は、映画「ジュマンジ」と同じ設定、だと言えば分かるだろうか。脱落していく元太・光彦・灰原・あゆみ・蘭は、みんなコナンを信頼して消えていく。しかし残されたコナンは最期諦めかけて、メガネが全反射して….

ぜひ、映画をご覧ください。あの映画の中で、コナンたちは100年前のホームズ時代のロンドンに行く。ホームズ作品のキャラクターが出てきて、ホームズオタクのコナンはテンション上がっていた。

それを見て、ホームズってこういう人たちが出てくるんだ、と自分は知った。でも、なんだかんだこれまで読んでこなかった。だからずっとコナン越しで知ってるホームズだった。それを今20年越しで、本物を読んでみた。

なので、まず個人的にはその伏線回収が楽しかった。第一話からいきなりのアイリーン・アドラーには興奮した。ホームズが安楽椅子に座ってる場面は、映画のコナンくんで脳内再生された。自分と同じくコナン越しにホームズを見ている人はぜひ読んでみてほしい。

感想

「ちょっと時間あるし名探偵コナンのアニメを一話見ようかな〜」位の気持ちで読めた。昔の小説にありがちな、当時の社会が分からないと、この小説の面白さ分かりません、みたいな事もない。なぜなら事件がただ面白いだから。

【登場する事件の例】
・ガチョウの胃袋から出てきた宝石の謎
・オレンジの種が5粒送られてくると死ぬ呪い
・赤髪の人達の組合に入るとなぜかめちゃめちゃ報酬の良い仕事がもらえる謎

どうでしょう。どの時代でも謎。面白そうと思った方はぜひ読んでみてください。

ホームズのキザなまでの自信満々っぷりが魅力的だった。正直もう少し大人しいキャラかと思っていたら、意外と自信家で高飛車でクセがある。ワトソン君を普通に馬鹿にするし、めっちゃアヘンも吸う(笑)。「わたし、失敗しないので」という感じ。でも、ちゃんとその自信通りに解決してくれる。そして徐々に、「この奇怪な謎をホームズはどう考えるのだろう?」と気になってしまう。どこへでもついて行くワトソン君の気持ちが分かってくるのだ。

ワトソン君は、活躍しそうで、しないところが良い。ホームズの観察者として、読者に近い目線で語ってくれている。そもそも彼が『シャーロック・ホームズ』の語り手だとすら知らなかった。それに、50代くらいのおじさんだと勝手に思っていた。けど、ホームズと同年代で30歳位?だった。ごめんワトソン君。

あとは、各話の終わりに発表された年が書いてあり、それを見てなぜかふと南方熊楠を思い出した。これら短編の発表年は1891年~1892年頃。熊楠は1892年~1900年頃までイギリスに滞在していた。時期が被ってはいないが、ほぼ同じくらい。ホームズが話題だった時期だろう。だからつい「熊楠も当時これを読んだかもなぁ。赤髪組合にテンショ上がったかなぁ」と考えちゃって。なんかエモい。東大寺の大仏を見て、奈良時代の人もこれを見て感動したのかなぁ、と考えてしまうような、あの感じ。

まさかホームズでそんな感覚を味わうとは思ってもいなかった。嬉しい誤算。

古さを感じさせない面白さもあり、ふいに歴史も感じられる、楽しい読書だった。

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