京都が舞台の小説、原田マハさんの『異邦人(いりびと)』を読みまして、京都は他所の人からすると馴染みにくい場所なのか…と思いまして。
というのも、作中に出てくるホテルハイアットリージェンシーで働くお姉さん(一瞬しか出てこない)が、「京都に越してきたけどいつまでも受け入れてもらえてない気がする。自分が異邦人(いほうじん)のようだ」と言っていた。
京都で育ってきた私としては、そんなことを言われてしまうのか悲しい!お姉さんもそんな淋しいこと言わんと〜って思ったのでそんなお姉さんに向けて。
どうやったら京都に受け入れられるのか、いや、もはや京都人になったらいいんちゃう?
ということで『How to be 京都人』考えてみました。京都人になりたい方必見?!
■そもそもお姉さんの受け入れてもらいたい京都とは?
そう、私は聞きたい。
ハイアットのお姉さんよ、あなたの受け入れてもらいたい京都はどこなんだい?舞鶴かい?京丹後かい?まぁ流石に大阪に行くより遠いので、そんなことないやろうけども。
まぁちょっと意地悪な質問やったかもしれんけど、ハイアットがあるのは京都市内だから、たぶん京都というのは京都市のことでしょう。
と、ここで出てくるのが
『京都の人のいう”京都”ってどこや問題』!
ドンドンドンパフパフ。ご存じでしょうか。京都の人のいう”京都”は京都府でも京都市でもないということをー!!
まぁ普通にそういう場合もあるのですが、今回は特殊な”京都”、紹介します。
ちょっとハイアットのお姉さんのことは京都タワーの展望台にでも一旦置いておきます。堪忍え。
そうです、めっちゃ余談なんですが始めちゃいます。
ということで、まずは京都府と京都市、どんなんか見てもらいましょ。
どどん!

そう、この犬の形をしたのが京都府で、赤丸が京都市ですね。京都府の中では面積も一番大きいし、人口も一番多いのが、この京都市です。これ⇩

一番栄えてるんやったら”もうこれが京都やん”となりそうですが、ところがどっこい、そうならないのが京都人のややこしいところ。
さて、我々はどこを”京都”といっているか。
これがまたややこしい話で大きく分けて3パターンあります。
もうトントンと紹介していきます。
まずはパターン1!「平安京」があったところが京都パターン。
じゃん!

この赤枠が平安京があった大体の位置。
急に”京都”狭なった!
ちなみにもっと寄るとこんな感じ。

きれいな碁盤の目です。
ここのピンクの中が”京都”と。もう何千年前の話してんねんなって感じですね。
せっかくなので、京都府から見るとここ⇩
青い四角の部分が平安京です。

え、”京都”まじでちっさ!
ってなるんですが、何を隠そう私もこのエリアに住んでたもんで、子どもの頃はそんなもんやと思ってました。大人になった今でもまだその感覚残ってる気もする…。
次いきましょう。
パターン2!「御土居」があったところが京都パターン。
まず御土居とは豊臣秀吉が天下統一後に作った京都を囲む土塁。
建てた理由は不明らしくて、敵からの防衛や荒れた京都の地を建て直して整備するためだった、とも言われている。
1467年に起こった応仁の乱後、京都の街はどんどん荒廃していたらしい。
秀吉が天下を統一したのが1591年。秀吉が手をつけるまでは誰も整備とかしてなかったんか、この頃の京都の街はボロボロやったらしい。
ほんで、この御土居の中が、いわゆる洛中になる。あの、『洛中洛外図屏風』でも有名な。
じゃあ御土居はどこか。
じゃん!下図の赤枠のエリアです。

アップだとちょっと分かりづらいのですが、さっきの平安京と同じくらいの面積で、ひゅひゅっと縦長にした感じです。エリア自体もそんなに大きくずれてません。
だから京都府から見ても京都市から見ても、”京都”のちっささは変わりません。ほとんどの京都がないがしろです。
そしてさらに!
平安京よりも、御土居よりも、さらにさらにピンポイントなエリアのみを”京都”という人たちがいる。
…もうこれ以上ややこしい説明させんといてほしい。皆さん、ついて来れてますか…??よぉ分からんわ、という方は変な地域もあるもんやなと軽く流してください。
さらにピンポイントなエリアとは、
パターン3!田の字(この名称調べて初めて知ったw)エリアが京都というパターン。
そんなピンポイントってどこやねんというと
じゃん!

赤の御土居に対して青のところ。この一角のことらしい。
平安京、御土居、田の字、この三つを京都市の地図で見ると、、

ピンクが平安京、赤が御土居(ほんとはこんな四角じゃないけど)、青が田の字。
待って待って、田の字ちっさ!
ちょっと面白くなってしまったので京都府で見てみましょう。
どどん!

ちょ、ちっちゃ!
恐るべし田の字。マハさんの『異邦人』に、この田の字エリアの人の話がある。
それが祇園祭の屏風祭りの様子です。そうです、代々呉服屋さんやってるとか、由緒あるお家の人がいるイメージ。
ちなみに、小説『異邦人(いりびと)』は、異邦人(いほうじん)をあえて”いりびと“と読ませてる。

“いりびと”とは、京都以外で生まれて、京都にやってきた人のこと。
すごいな、わざわざこんな言葉が存在するっていうのが。さすが京都さん。
そら、ハイアットのお姉さんみたいに他所から来た人は受け入れてもらえへんって思うのかも。
と、余談がとっても長くなりましたが、ハイアットのお姉さんはどの”京都”に受け入れてもらいたい?
一番小さい範囲の田の字かしら。THE京都って感じやしなぁ。
ただ、一番クセは強いでっせ…ふふふふふ
もうこんなめんどくさいなら異邦人のままで良いです
ってハイアット姉さん(急に芸人さんぽくなったw)に言われてしまいそう。
でももう本題にいくのでご安心を。
■どうしたら京都人になれるのか
これを考えるにあたり、図書館で京都関連の本を探してみました。そう、私は真面目です。
何冊かあった中で、『京のわる口/ 秦恒平 著』の巻末の解説で、酒井順子さんが今回のテーマのヒントになるようなことを言ってたので引用しようと思います。
寺社仏閣を巡ったり抹茶風味の何かを食べている時よりも、ですから京都の友人と話したり行動を共にする方が、私にとってはずっと「京都にいる!」と実感できる時間でした。京都の人の言葉と行動の中にこそ、京都は存在していたのだから。
酒井さんは東京生まれ東京育ちだそうです。
そんな酒井さんが「京都」を1番感じたのは、「京都の人の言葉と行動」。
今回は言葉の方に注目します。(正直、行動っていわれてもよく分かんないんでね)
京都っぽさ=京都弁。つまり京都人に近づくには、京都弁をマスターするのが良いのでは?!
京都弁を使いこなすことによって、自分以外の人に「京都だ」と感じてもらうことができれば、もうそれは「京都人」なのでは?!
というちょっと無理のある方向性な気もしますが、最後まで突っ走ってみようと思います。
ほないくで〜
■京都弁を使いこなそう
注) ここで言う京都弁は昭和61年生まれの私が使ってきた京都弁なので、よくイメージとしてある「〜どすなぁ」とか「〜しとおくれやす」みたいなものは出てきません。そういったおばあちゃん世代の言葉に興味を持たれている方は、それこそ『京のわる口』をぜひ読んでみてください。
これがわたくし独自の、ごりごりの主観の京都弁です。情報が偏ってるかもしれないし、間違ってるかもしれません。でも、それを使ってきたんだもの。ご容赦くださいまし。

レベル1 : 「〜はる」を多用する
これは自分でも自覚ある。自分たちのラジオで喋ってても、やたら”はるはる”言っていることに気付く。
そうです、なんにでも「〜はる」を付けます。
たまに敬語(丁寧語?尊敬語?)と勘違いされたりもしますが、そんなことはないです。
人に対してじゃなくても使います。犬とか猿とか鷺(サギ)とか。
とりあえずは第三者の行動について何か言うときは思い切って付けてみては??
活用形としては、
現在形 | 〜はる(例:しはる、言わはる)、 〜たはる(例:したはる、言うたはる) 〜てはる(例:してはる、言うてはる) |
過去形 | 〜はった(例:してはった、したはった、言うてはった、言うたはった) |
この「〜はる」の後ろに、「わぁ」、「なぁ」、「で」を付けると相性いいです。
例文:あの人ずっとあそこ座ったはるわぁ
「〜はるんちゃう/〜はったんちゃう」は推量・推定の時に使います。「ちゃう」の後にさらに、「知らんけど」を入れると、さらに本場感が増します。
例文:お尻にアロンアルファついてしまわはったんちゃう、知らんけど。
レベル2 : 母音を伸ばす
これは京都弁に限ったことではないかもしれないが、1文字の言葉をだいたい伸ばす。
たとえば「目」は「めェ」、「毛」は「けェ」、「歯」は「はァ」、「日」は「ひィ」となる。
「日」みたいに「日」と「火」がある場合、「ひィ」のアクセントの位置で意味が変わる。
「ひ」にアクセントがあると「日」。「イ」にアクセントがあると「火」。
なんとも難しい…。
そして、伸ばす代わりに助詞(“が”とか”は”とか”の”とか)は付けない。
例文:目ぇかゆい
ちなみに、「かゆい」は、最初の文字「か」にアクセントが来る。
形容詞とか三文字とかは全部そうなのか、法則性あるのかと思って考えてみたけど、単語によってマチマチやった。
もうこれは、ネイティブといっぱい喋ってください。(←結果こうなる)
またまた余談ですが、京都では「ものもらい」は「めいぼ」、大阪では「めばちこ」って言います。
目にイボなんてめっちゃ分かりやすい。
これもぜひ使ってください。
レベル3 : 否定の時の「〜ハ行+ん」
近くの地域だと方言は似るけど、実はそれぞれちょっとずつ違うってどこの地域にも言えることだと思いますが
関西弁もそうです。
似たような言い方なのにちょっとずつ違う。そんな中から京都弁を使いこなせていたらすごい!
ということで、今回は関西人には有名?な「来ない」の言い方。
さぁ、京都弁では何と言うでしょう?
正解と近隣の他府県の言い方はこちら⇩
標準語 | こない(来ない) |
京都 | きぃひん/きゃあらへん |
大阪 | けぇへん |
神戸 | こぉへん |
奈良 | こやん |
他にも、標準語で「しない」を「しぃひん」と「せーへん」。「居ない」を「いーひん」と「おらん」、とか。
どちらも前者の方を京都の人は使うんじゃないかなー。否定の時に結構場所ごとの色が出るんやろか。
京都はイ段になるの??
ちょっともうよく分かりません。お手上げ。
さぁ、まとめです。
今まで紹介してきた京都弁の特徴三つを全部使ってみましょう。
『見て、あの鴨川のカップル。あんなとこでいちゃいちゃしてはるわ。手ぇ繋ぐぐらいにしとかんと、”こんなとこでそんなんしんときやぁ”ってその辺のおっちゃんに言われるで』
『604号室の田中さん、もうチェックアウトの時間やのに全然降りて来あらへんなぁ〜。連泊やったから日ぃ間違えてはらへんやろか。』
この二つが言えたら、あなたはもう京都人です!おめでとう!!
是非ともハイアットのお姉さんには、職場でもプライベートでも京都弁を使いこなしてもらって、地元のお友達を呼んで「京都弁移ってるじゃん!」と言ってもらえたら、京都に馴染んだと思って貰えるのではないでしょうか。
最後に。
京都らしいものといえば、碁盤の目。
通りにそれぞれ名前があって住所は通りの名前も書いてあるから、どの辺ってのがすぐイメージできて便利。
ということで番外編。
番外編 : 上ル、下ル、西入、東入を使いこなす
それぞれ、「アガル」、「サガル」、「ニシイル」、「ヒガシイル」と読みます。
これは東西南北を表していて、二つの通りが交差する点から見て、北が「上ル」、南が「下ル」、西が「西入」、東が「東入」。
たとえば
京都の四条河原町にある(これも二つの通りが合わさった名前。四条通りと河原町通りの交差点付近)、百貨店の高島屋の住所。
京都市下京区四条通河原町西入真町52
(きょうとし/しもぎょうく/しじょうどおり/かわらまち/にしいる/しんまち)

四条通りと河原町(通り)の交差点の西側にあるよ、ということになる。
同じ町内でもどことどこの通りのどっち側にあるのかで、この通りの部分が変わってくる。ちなみにここは省略可。京都市〇〇区〇〇町何番地でもいける。
細かなルールは分からないけど、住所見たら分かるよ、くらいの感じ。
ちなみに、私の地元の友人にもこの方向感覚さっぱり分かってない人たち多いので、”京都人”って訳でもないのかも。
これで、お友達が京都に遊びに来たら、お店の住所を見ながら案内してあげましょう。「もう京都人じゃん〜!」って言ってもらえるはず!
…こんなことをぐだぐだ言う前に私がお姉さんとお友達になった方が早い気がする。ぜひお友達になりましょう。
ということで、京都人になりたい方はどんどん京都人と仲良くなりましょう。
きっと京都人になる一番の近道かも?!(結果ここに帰着。)
京都の人とは仲良くなるのが難しいんや。という声が聞こえてきそうやけど、
それは勝手なイメージが先行してるだけで今の時代の人なら、どこの地でもおんなじです。
たぶんな、知らんけど。
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