物語が禁止された国・物語AI・新刊小説に関する問いかけなど、8人の作家による「物語」を題材とした短編のアンソロジー。
ここでは『ゴールデンアスク』/椰月美智子の感想を記しておきます。
西園寺さゆり先生のような、綺麗事は言わず、個性がビシビシに強めの大人との交流は、中学生に良い刺激になると思う。
学校は集団生活での立ち回り方を学ぶ場という側面がある。集団生活を通して、人と何かをするには「本音と建前」「個性と協調」のバランスが大事だと子どもたちは学んでいく。それはひとりの人として社会で生きていくのに大切なことである。
しかし、小学校・中学校と長年過ごしてくると、なかには自分を殺す傾向が強すぎる子が出てくる。何をするにも最初から集団の意向を気にしてしまう。さらには、集団の意見なのか自分の意見なのかが、もはや分からなくなってしまう。結果、自分の本音が分からなくなってしまう。
『ゴールデンアスク』の俊介は、異常に「ダサさ」を嫌う。合唱部の練習も、ダサいからという理由で避けている。ただ、この物語の結末を考えると、それは本音ではなかったと思う。その行為がダサいからやらなかったのではなく、その行為をすると「周囲にダサいと思われる」からやりたくなかった。おそらく俊介も”自分”ではなく”集団”を強く気にする子だったのだろう。
そんな俊介が、居酒屋で西園寺と交流する。
俊介から見ると西園寺は「イタい人」だ。でも彼女はそんな周囲の目など全く気にせず、好きな格好をし、子どもにも本音でぶつかりながら酒を飲み、自分の好きな小説を作っている。”自分”をちゃんと持っている。その姿や言葉や創造力がカッコよく見えた。そして俊介に、もっと正直に生きて良いのだ、と思わせ、忘れていた”自分”への意識を取り戻させたのだろう。
良い刺激を受けた俊介は最後、清々しい。私も刺激が欲しい。
こんな感想を持ちました。
ということで明日から近所のジムに行って、身体に物理的な刺激を与えようと思います。
他には『あかがね色の本』/千早茜について
薄暗い部屋の暖炉の前で、ココアを飲みながら、今まで大事にしまっていた思い出を教えてもらっているような温かさ。
たぶんそう感じるのは、文章がすべて丁寧語で綴られていて、それが一人称で、優しく隣で語りかけてくれてるようだから。
寝る前に読んで、ぐっすり眠りたい。
という感想もありました。
みなさんはどうでしょうか?ぜひ読んでみてください


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